時間にまつわる副詞「ずっと」・「もうすぐ」・「まだ」・「やっと」……
目次
副詞をおさらい
副詞の分類
程度 | 比较(わりと),更(さらに),真(本当に)など |
範囲 | 才(わずかに),都(全部),就(〜だけ)など |
頻度 | 常常(いつも),还(また),又(また),经常(しょっちゅう)など |
時間 | 才(やっと),曾经(かつて),从来(これまで),刚(〜したばかり),就(すぐに),快(まもなく),马上(すぐに),立刻(ただちに),已经(すでに),一直(ずっと),正在(ちょうど)など |
否定 | 不(〜しない),没(有)(〜しなかった/していない) |
様態 | 忽然(急に),互相(互いに),顺便(ついでに)など |
語気 | 大概(たぶん),倒(かえって),果然(案の定),可(実に),一定(きっと),似乎(〜らしい)など |
副詞の位置
種類によってさまざま。大多数の副詞は動詞、形容詞の前に位置するが、程度副詞の一部は動詞・形容詞の後ろに置かれたり、肯定・否定を表す副詞は表現したい内容によって異なり、また語気副詞は文頭に置くこともあるなど、分類ごとにそれぞれ確認する必要がある。
これについては改めてまとめる。
【現状との関係】昔は/以前は
原来、本来、曾经、从来
①原来
時間と関わる使い方の時は(以前の状況と現在を比較した結果)「元来」「もともと」という意味。"原打算"(つもりだった)、"原想"(思っていた)、"原定"(決めていた)のように、"原"一文字で使うこともできる。
他原来不会说汉语。
彼はもともと中国語が話せなかった。
②本来
時間とかかわる使い方の場合、"原来"とほぼ同じ。
他本来姓张,后来才改姓李的。
彼はもともと張姓だったが、後から李に改姓した。
我本来想告诉你这件事。
私はもともとこのことを伝えようと考えていた。
上記の"原来"、"本来"を使う時には以下の決まりがある。
①"2000年"、"十年前"など時間を指す言葉とは一緒に使いません。たとえば、"×我十年前原来〜"とは言いません。
②"都"、"也"と一緒に使う時は、時間を指す言葉と同じように"都"、"也"の前に置きます。我们原来都住在北京。私たちはもともとみんな北京に住んでいました。林松濤(2017)「つたわる中国語文法」p.168
③曾经
"原来"、"本来"を使う場合は現在の状況が昔と同じである可能性も残っているが、"曾经"は「かつて~だったが現在は違う」「現在すでに終わっている」というメッセージが込められている。 
"原来"、"本来"と違い、時間を指す言葉と一緒に使えたり、"都"、"也"の後に置くことができる。 
アスペクト助詞"过"(~したことがある)を伴うことが多い。
我曾经一个人住。
私は以前一人暮らしをしていた。
他曾经学过法语。
彼はかつてフランス語を学んだことがある。
④从来
多くは否定文に用いられ、「~したことはない」「~しない」ということを強く主張する。 
時間を指す言葉とは一緒に使わない。
他从来不喝酒。
彼は酒を飲まない。(今も、これからも飲まない)
我从来没喝过酒。
彼は酒を飲んだことがない。(これからどうなるかは分からない)
「从来 + 肯定表現」は「昔から今までずっと~している(のだから、これからもするだろう)」という、規則性を思わせる表現になる。
喜欢喝洒的人从来都是喜欢吃面条的。お酒が好きな人は必ずラーメンが好きだ。 
以上のように、"从来"は、とくに肯定文において日本語の「従来」とだいぶ異なります。規則性を表さず、単に「今までずっと」という意味の「従来」を中国語で表現したい場合は"以前"、"一直"、"照旧"を使いましょう。
林松濤(2017)「つたわる中国語文法」p.170
【未然と已然】まだ/すでに/~したばかり
还、已经、刚
①还
未然を表す。時間に関する使い方の時は「まだ」と訳される。
我还没去过北京。
私はまだ北京に行ったことがない。
②已经
「もう/すでに〜した」「もう/すでに〜になっている」などの已然を表す。文末に「そうなった」の意味の"了"をつける。
门已经开了。
入り口はもう開いている。
他巳经走了。
彼はもう出かけた。
③都
軽く発音して「すでに」の已然を表す。
已经との違いは、已经が客観的に事実を述べているのに対して"都"は「もうそうなってしまったのか」といった驚きの気持ちなど主観が加わる点にある。
都十二点了。
もう12時だ。
③刚
未然と已然どちらも表す。"刚刚"とも言う。
似た言葉に"刚才"があるがこちらは「さっき」「いましがた」という意味の時間を表す名詞。
よくつかわれるのは「いま完了したばかり」のケース。
刚下过雨,河水很浑。
雨が降ったばかりで、川の水が濁っている。
我正好刚泡完澡出来。
ちょうどお風呂から出たところです。
これからする行動や、始めたばかりの行動にも使える。
孩子刚学会走路好摔交。
子供は歩き始めた頃はよく転ぶ。
「変化が起きる前」「変化し始めた」「終えた」とどの時点でも使用でき、「ちょうど」という話し手の主観的な感覚を表しているので、未然/已然の両方を表すことができる。
已经と曾经と刚はいずれも動作が終了していることを表すが、使い方に違いがある。
已经 | Vの後ろ/文末に"了" | すでに〜した、すでに〜していると事実を客観的に述べている |
曾经 | Vの後ろに"过" | 「かつて〜したことがある」と過去の経験 |
刚 | 一般に"了"はつかない | 「ついさっき〜したばかり」 |
【話し手の感情】もう/やっと
就と才
"就"は話し手が「(時間が)早い/短い」、"才"は話し手が「時間が)遅い/長い」と感じる時に対照的に用いられる。
通常"才"を使うときには"了"は使わない。
他六点就来了。
彼は6時にもう来た。
他六点才来。
彼は6時になってようやく来た。
就は何の障害や滞りもなく行われるのに対し、才は「あれこれと手間取ってやっと」のイメージ。
この「早さ」「遅さ」は過去のことに限らず、未来のことにも使える。
她应该不久就到你那了吧。
まもなく彼女はあなたのところに着くでしょう。
要过了晚上12点才到。
到着が夜12時過ぎになります。
時間副詞"才"の用法 その2
単文で動詞を修飾し、「~したばかり」と訳されることがある。
他才来日本不久。
彼は日本に来たばかりです。
【継起】すぐに/もう/もうすぐ
就、马上、立即、立刻
「もうまもなく」や、「〜すると(したあと)すぐに、〜する(した)」という継起を表す。
就・马上は話し言葉が多く、立即は書き言葉が多い。立刻はどちらでも使われる。
我就来、你等一下。
もうすぐ行くから、ちょっと待っててね。
以上は単文の例だが、よく複文で使われる。
拿了工资、我立刻就还你。
給料をもらったら、すぐ返します。
马上日本的天就要亮了,而你却还在工作。
もう日本は朝になるというのに、あなたはまだ働いている。
我一起床,他也立即起床了。
私が起床すると、彼もすぐに起床した。
【継続】ずっと
一直、始终
状況や内容が「ずっと変わらない」ことを表す。
"都"とセットで"一直都"、"始终都"のように使われることもある。
①一直
時間表現として使う"一直"は「絶え間なく」というニュアンスで、過去・現在・未来、いずれの場合にも使える。
他一直一个人生活。
彼はずっと一人暮らしをしている。
我一直在打扫。
ずっと掃除をしていた。
①始终
「はじめから終わりまでずっと変わらず」という意味合いで、「いつまで続くか」という終着点を示さないのが一直と異なる点。
習慣的・恒常的なことを述べる際「一直」とも言い換えられるが、やや改まった言い方。
「ついさっき発生して、現状まで続いている」ようなことには通常"一直"が使われ、"始终"は使わない。
"始终没" + 動詞 + "一" + 量詞 + 名詞の形で「終始ずっと~なかった」のように言い表せる。
他始终一个人生活。
彼はずっと一人暮らしをしている。
他始终没说一句话。
彼は終始なにも言わなかった。
【進行】~している
在、正
①在
「~している」最中。行動の「開始と完了の間にいる」というイメージを表す。
他还在睡觉。
彼はまだ寝ています。
你在吃什么?
何を食べているの?
②正
「ちょうど(~しているところ)」。よく"在"と一緒に使われる。
她正化妆着呢。
彼女は化粧しているところだ。
他正在开会呢。
彼は会議中だ。
③"正"と"在"の違い
"正"は「まさに~している」という点に、"在"は「そのことをしている状態にある」点に話し手の注意が向いており、"正在"はその両方を含めるといわれていますが、基本的にはいずれも進行を表します。
相原茂、石田知子(2016)「Why?にこたえるはじめての中国語の文法書」p.199
"正"と"在"最大の違いは、"在"は「進行中」に使いますが、"正"は「これから」と「進行中」に使うことです。「終わったこと」には使わないという点で"刚"とは違いがあります。
 
我正要给你打电话呢。ちょうど電話しようとしたところです。我刚吃完饭。私はご飯を食べ終わったばかりです。林松濤(2017)「つたわる中国語文法」p.179
参考書籍
様々な本から1記事にまとめようとしたら長い記事になってしまった…。どれもおすすめです(特に「Why?にこたえるはじめての中国語の文法書」は文法書の中で一番わかりやすい&網羅されてます)。