中国語の否定「不」・「没」の違いと使い分け方

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2020.7.18

「財布の中にお金が入ってない」…の時は「钱里包没有钱」、「鍵はカバンの中に入っていない」…の時は「钥匙不在包儿里」……。
「"没"は過去の動作の否定」、「"不"は未来の動作の否定」…という風に覚えてしまうと、上記のような使い分けができなくなってしまうので、改めて否定副詞「没」「不」についておさらい。

【動詞や型から見る】
"不"の用法

動詞"是"の否定は"不"一択

"是"の否定は"不是"であり、"没是"とは言わない。

是坏人。
彼は悪い人ではありません。

動詞"在"を使うときは"不"だが、内容によっては"没"

「鍵はカバンの中に入っていない」は、「財布の中にお金が入ってない=Aの中にBはない」とは違い、「AはBの中にない」という表現なので"有"ではなく"在"を使うことになる。
"在"を使うときは基本的には"不"なので、「钥匙不在包儿里」ということになる。

しかし内容によっては"在"でも"没"で否定することがある。
"不在"が単に事実を述べているのに対して、"没"は相手の話を否定するニュアンスがあるので、"没在"とすることで「いいえ、カバンの中ではなく別のどこかにあります」というニュアンスになる。

钥匙不在包儿里, 在桌子上。
鍵はカバンの中にはありません。テーブルの上にあります。

钥匙没在包儿里, 在桌子上。
鍵はカバンの中ではなく、テーブルの上にあります。

形容詞述語文は"不"、たまに"没"

「良くない」「大きくない」「美しくない」「不便である」…などの形容詞文は基本的には"不"で否定する。
また、"不"で否定する時には平叙文で使う飾りの"很"は不要だが、「その程度」を否定したい(=部分否定)場合は程度副詞を入れ、その前に"不"を置く。

今天热。
今日は暑くない。

很聪明。
彼はあまり賢くない。

しかし下記のように「まだなっていない」と表す場合は"没"を使うこともある。

葡萄紫了, 可是苹果还红。
ブドウは紫色になったが、リンゴはまだ赤くなっていません。

 

"没红"(赤いという状態になっていない)は、"红了"(赤くなる)を否定する表現ですので、当然赤くなるという変化を前提としています。「変化するだろう」という想定がしにくいケースには、"没"をつけません。

林松濤(2017)「つたわる中国語文法」p.199

また、一部の[ "有+名詞" ]という構造の特殊な形容詞は"不"ではなく"没"で否定する。

有意思(面白い) 有意思/意思(面白くない)
有礼貌(礼儀正しい) 有礼貌/礼貌(礼儀正しくない)
有教养(教養がある) 有教养/教养(教養がない)

【動詞や型から見る】
"没"の用法

"有"の否定は"没"一択

"没"は"没有"の省略された形。"没有"でも"没"でも同じ。
「財布の中にお金が入ってない」など、"有"で存在・所有を表す時は"没"を使い、"不"は使わない。

我现在有时间。
私はいま時間がない。

"过"がある時も"没"一択

「~したことがある」という経験を否定する時も"没"。

我还出过国呢。
私はまだ海外へ行ったことがありません。

進行を表す副詞"在は"没"だが、内容によっては"不"

上記で「存在を表す動詞"在"の時は基本的に"不"」と書いたが、「~している」という進行を表す副詞"在"のときは、基本的に"没"を使う。
"不"を使うこともでき、その場合「~はしていない」(他の何かが進行している)といったニュアンスになる。

没在学习。
彼は(今)勉強していない。

不在学习。
彼は(今)勉強していない。→「他の何かをしている」

一般的な動詞文は両方使う

否定するのは「意思」か「結果」か

過去のことには"没"、現在や未来のことに"不"を使うと思われがちだが、実際は表現したい内容に合わせてどちらも使うことができる。
その際に重要になってくるのが「意思」を否定するのか、「結果」を否定するのかということである。

過去の場合

"没"のケース

単に過去の否定を、客観的に述べるときは"没"。基本的にはこちらが多い。

我昨天看电视。
昨日私はテレビを見なかった。

"不"のケース

自分の意志で「~しなかった」「~したくなかった」と強調する時は"不"。

我昨天想和你说话。
昨日私はあなたと話したくなかった。

また、使役表現「~させる」の"让"の前にも、"没"や"不"をつけることができる。

[1] 小时候, 妈妈让我学钢琴。
小さい頃、母はピアノを習わせてくれなかった。

 

[2] 小时候, 妈妈让我学钢琴。
小さい頃、母は私にピアノを習せなかった。

 

[1]は自分は習いたかったのに、母が習わせなかったという意味です。つまり、「私」の「意思」が否定されました。[2]は母はピアノを習う事を勧めなかったという事実を述べているだけです。つまり、"没"は事実にだけ関係しています。

林松濤(2017)「つたわる中国語文法」p.201,202

現在の場合

"没"のケース

単に「現在していない」動作や状態を表す。

我现在抽烟。
私は今タバコを吸っていない。

点的菜还来。
料理がまだ来ていない。

"不"のケース

習慣的に「しない」、または動作を行う意思の否定は"不"で表す。

抽烟。
私はタバコは吸わない。

做, 我做。
彼がやらないなら私がやる。

未来の場合

基本は"不"

未来の動作・状態の否定を表すとき、基本は"不"を使う。

明日我在家。
私は明日家にいません。

"没"のケース

仮定として"没"を使うことがある。

钱的话在国外生活很难。
お金がなければ海外で生活するのは難しい。

以上のように、"不"は現在・未来に、"没"は過去に使うことが多いものの、「意思」や「仮定」などの表現に合わせて時間軸に関係なく使い分けることができる。

参考書籍

PROFILEプロフィール
うさんちゅ 大量に本を買って隙間時間で中国語を勉強し始めたアラサー。 本格的に勉強を始めたのは2020年3月から。 週2でオンライン授業も受け初めた(2020年5月~)。
中国語でドラマや映画を不自由なく視聴できること・HSK6級合格を目標に長く続けていきたい。
東南アジアの旅行にも興味があるので、旅行で不自由しない程度の基礎会話・文法も気分転換に勉強したい。
普段は在宅でWEB関連の仕事をしている。